総合進学塾、英数スタディー(御坊市藤田町藤井)で小論文、現代文、英語などの講師を務める傍ら小説を執筆している林晋作さん(49)=御坊市野口=が3つの文学賞を受賞した。
第16回ノースアジア大学文学賞短編小説の部で現代小説「春の闇」が奨励賞、山形新聞主催の山新文学賞で時代小説「相対死稼業」が準入選、第59回岐阜市文芸祭短編部門で時代小説「左の報い」が佳作入賞。
ノースアジア大学文学賞は著名な脚本家の内館牧子さんらが選考委員を務め、「春の闇」はリタイアした父の俳句作品から娘が女性の存在を疑うが、実は猫が父の暮らしを温めていた――というほのぼのした作品。
山新文学賞では昨年12月、今年1月に続いて3度目の入賞。相対死(あいたいじに=男女の心中)をテーマとし、江戸時代後期の「行人坂火事」と呼ばれる大火を時代背景に、心中を偽装して礼金を得る稼業にのめり込む夫婦の姿が描かれる。新聞の1㌻を使って全文が掲載された。
以前に最高賞を受賞した岐阜市文芸祭では、左利きを理由に勘当された剣術道場主の息子を主人公とする作品で佳作入賞。跡を継いだ双子の兄が病気になったため身代わりとして呼び戻されるが、勝手な父への怒りから、大事な試合でわざと負けて復讐を図る。
また、林さんは徳間書店主催の第7回大藪春彦新人賞にも時代小説「瘡(かさ)の企み」で応募しており、252編の応募作から1次選考を通過した。通過作品は23編、選考委員は今野敏、馳星周の両氏。
林さんは「初めて書いた現代物で受賞できたのは意外で、うれしく思います。山新文学賞の作品はこれまで書いた中でも特に気に入っている作品、岐阜市文芸賞の『左の報い』は以前に別の賞に応募して落選した作品を書き直したもので、推敲によって結果を出せてよかったと思います。今後もさらに書き続け、大きな賞へも挑戦していきたいと思っています」と意欲的に話している。