県立医科大学は23日、皮膚の創傷を修復する働きを持つ免疫細胞の一種「マクロファージ」について、創傷の治癒過程で出現する役割のバランスを明らかにしたと発表した。マクロファージの持つ役割のバランスが明らかになったことで、傷が早くきれいに治る医療技術の開発や応用が期待される。

 創傷の治癒過程は、白血球が組織に侵入し創傷を清浄化する炎症期、創傷を治癒する肉芽(にくげ)組織が増殖する増殖期、創傷を閉鎖しコラーゲンを生成する再構築期の3つに分けられる。マクロファージは白血球の一種で、治癒において大切な役割を担っているが、円滑な過程を経なければ、治りが遅くなったり、傷痕が残ったりすることがある。

 マクロファージはM1とM2の2つの型に大別され、M1は組織の炎症を促進させ強力な抗菌活性を発揮する役割、M2は炎症を抑制・収束させる役割を持つ。今回明らかになったのは、治癒過程におけるM1とM2の出現バランス。実験ではマウスの背中に傷を作り、治癒の経過日数でそれぞれのマクロファージの出現数を調べると、4日目にM1が多く出現し、7日目はM1とM2が同時に出現、10日目はM2が多く出現したことが分かった。今後出現のバランスを制御することが可能になれば、円滑な治癒過程の環境を与えることができ、傷の治りも早く、傷痕も残らずに治癒できることが期待される。

 発表を行った医学部法医学講座の石田裕子准教授は、「今後もマクロファージの変化を研究し、さまざまな治療に応用させ医学の発展に寄与できれば」と話している。