新たに導入した電気けいれん療法治療機器と上西医師

 御坊市のひだか病院は、精神科で重度のうつ病や統合失調症の患者を対象とした電気けいれん療法(ECT)に使用する治療機器を導入した。県内の精神科で電気けいれん療法を受けられるのは県立医大に次いで2カ所目で、紀中地域唯一の精神科がある総合病院としてさらなる医療体制の強化を図っていく。

 電気けいれん療法は、頭皮の上から電流を流して脳機能に作用させ、精神状態の改善につなげる治療法。精神の薬が開発される以前は一般的な治療法とされていた。映画などでも精神病患者に電気ショックを流す描写があり怖いイメージを持たれやすいが、現在は全身麻酔下で行うため、安全性も高い治療となっている。

 重度のうつ病や統合失調症では、薬や食事による治療が困難になり、体が固まって反応も乏しい状態で自らの意思決定をすることも難しくなる「緊張病性昏迷状態」になる人が多いという。認知症の高齢者にも多く見られる。電気けいれん療法は死亡率も低く、症状のより早い回復効果が期待されているが、これまでは県立医大附属病院のみでしか受けることができなかった。高齢化が進む中、より迅速で効果的な治療を提供することは喫緊の課題だった。

 治療は入院が必要で、週2、3回、計6~12回の継続が必要となる。今回の治療機器導入により、同院では麻酔科や他の身体科と連携しながら同じ病棟内で精神疾患患者を診療する体制が整った。今後、紀中に限らず紀南地域の精神病患者の受け皿にしていきたいとしている。

 精神科の上西真也医長(35)は、「他の診療科と協力しながら電気けいれん療法を提供することにより、より幅広い地域の診療ニーズにお応えしたい」と話している。