今回紹介するのは今村昌弘の「兇人邸の殺人」。デビュー作となる2017年の「屍人荘の殺人」は「このミステリーがすごい!2018」で第1位になるなど高く評価された。「兇人邸の殺人」は2019年の「魔眼の匣の殺人」に続く3作目で2021年に発表された。

 内容は、神紅大学ミステリー愛好会の葉村譲と剣崎比留子は、斑目機関の研究資料を探し求める医療関連の大企業の子会社社長である成島陶次の要請で、廃墟テーマパークにそびえる兇人邸に向かうこととなる。兇人邸はテーマパークを運営する会社の会長で、かつて斑目機関の研究者だった不木玄助が暮らしている。不木は定期的にテーマパーク従業員を兇人邸に招待するが、その屋敷に入った者はその後、姿を見ることは二度とないという。

 葉村たちは成島とその秘書、傭兵、内通者のテーマパーク従業員とともに兇人邸に侵入し、すぐに不木と使用人二人を捕らえたが、そこに現れたのが「巨人」。2㍍を超える体格に発達した筋肉、頭陀袋を頭に被り、片腕で大鉈を振り回し、誰彼構わず襲い出した。次々と殺されていく同行者たち。ただ、そんな中で巨人の仕業とは見られない殺人事件が起こってしまう。

 今回の作品もクローズドサークル。「屍人荘の殺人」では館をゾンビに囲まれるという方法だったが、今回は外に出る鍵は巨人の近くにあり、他の方法では巨人を外に解き放ってしまい多くの人々が犠牲になる。また警察などを呼べば、単純に不法侵入に問われるなどの理由がある。

 探偵少女の剣崎は巨人のいる別館に閉じ込められ窓を通しての会話しかできないが、さまざまな会話の中で推理し、犯人に近づいていく。巨人が登場するなどぶっ飛んだ内容ではあるが、斑目機関で行われていた過去の研究のシーンもあり、そこに出てくる人物と現在の登場人物との関連性など、いろいろ考えながら一気に読み進められる作品となっている。(城)