
芥川賞作家の綿矢りさがアラサー女性のリアルな心の揺らぎを描いた物語。一昨年には朝ドラ「あまちゃん」の主人公を演じたのんさん主演で映画化されました。のんさんファンの私は、映画とともに原作も読まなければとついつい手に。さらに主人公が私と同年代ということもあり、物語や周りの登場人物もついつい「あるある!」共感しっぱなしでした。
物語は、もうすぐ33歳のOLみつ子が主人公。彼女の脳内には何でも相談に乗ってくれるもう一人の自分「A」がいるし、一人で生き続けていくことに何の抵抗もない!と思っていたのですが…。ある日みつ子が近所の商店街でコロッケを買って帰ろうとしたところ、取引先の営業マン多田君と出会います。その日から多田君はみつ子の部屋に出入りし、手作りの夕食を共にするように。いかにもイイ感じなのですが、みつ子はAに「多田君と上手くいくのかな」と問いつつ自分を制御し、一歩が踏み出せないでいます。最後にAとの別れ、つまり本当の自分をさらけ出す瞬間が訪れるのですが、クライマックスのみつ子とAの脳内会話はどこか胸が締め付けられる展開に。
アラサーならではの人間関係や立ち位置について、今までの環境を変えなければと思うけれど、今の環境が心地よくて変えられないという心の揺れ動きに対し、脳内にAという別人格を作ることで何とか肯定しようとする主人公。その姿になんとも共感しました。もやもやした気持ちは全部脳内人格に消化してもらえればいいやという都合のいい解釈をしていても、いずれ脳内人格とおさらばし、本当の自分と向き合わないといけない。それがアラサー女の〝自立〟なのでしょう。
本の最後には、綿矢さんと同じ年に芥川賞を受賞した金原ひとみさんの解説もあり、さらにスッと腑に落ちる感覚にさせてくれます。物語のテンポもよく、一気に読める一冊です。(鞘)


