本来なら笛や太鼓の祭り囃子が各地から聞えてくる季節。ところが、新型コロナの影響で今年を含めて3年連続で神事のみという秋祭りが多く、獅子舞や四ツ太鼓などが登場することは少ない。昨年と比べると若干は元に戻りつつあるが、依然として縮小ムードだ。以前のように見物人でにぎわい、活気であふれる光景はみられず、祭り好きにとっては寂しいことだろう。

 筆者の場合、高校を卒業して生まれ育ったまちを離れたこともあり、それほど祭りに関わってこなかった。幼い頃の祭りの思い出というと、親戚や親の知り合いらが家に集まって酒をくみ交わしていたこと。今もその様子が頭の中に残っている。料理は近くの川で獲れたズンゴガニの塩ゆでなどが並んでいた。昼過ぎから夜にかけてどんちゃん騒ぎした後、酒に酔った人たちが帰り始める。そして家の中が静まり返ると、祭りの終わりを感じた。

 もう1つの思い出がサバ寿司。酢飯の上に塩漬けされたサバを乗せ、アセの葉を巻いた後、すし桶にきっちりと詰め、重しをかけて仕上げる。祭りが近づくと、家族でたくさん作り、近所や知り合いらにお裾分けした。サバ寿司のお返しもあり、祭りシーズンにはいつもサバ寿司が食卓に上がった。時代の流れで、今は知人を自宅に呼ぶことやサバ寿司を家庭で作ることは少なくなった。

 少子化の影響で祭り自体も変わり始め、過去から引き継がれてきた各地区の出し物などが消えつつある。コロナで3年間にわたり、伝統文化の継承が途切れたが、今の子どもたちが大人になった時、「あの頃は獅子舞や神輿が出て、人でにぎわったのだか」と当時を振り返ることになりはしないか。(雄)