ソ連と国家の威信をかけて競ったアポロ計画から半世紀。米国が再び人類を月面に送り込むアルテミス計画に乗り出した。今月4日未明には無人宇宙船を搭載したロケットが打ち上げられる予定だったが、燃料漏れなどのため延期となった。

 月は地球からの距離が約38万㌔。直径は地球の約4分の1の3476㌔で、地球の周りを回りながらその位置によって見える大きさ、形が異なり、29・5日かけて元の姿に戻る。

 一定の周期で毎日、姿を変える月は、はるか昔から人類共通のカレンダーとなり、1年を365日とする時間の概念が生まれた。一方、季節によって見える星座や位置が異なる星は、方角を知るために必要な目印だった。

 人と月、星とのかかわりは、地域によって関係の深さが異なる。砂漠や海を移動する人は方角を間違えば死に直結するため、生きる上で星空は絶対に欠かせないが、日本人は夜空を見上げても星はあまり見ず、より身近な月を見て生きてきたといわれる。

 日本では明治の改暦まで、月の満ち欠けの周期を基準とする太陰暦で生きてきた。三日月、望月、十六夜月、臥待月…日々、姿かたちを変える月に名前をつけ、1年の12カ月も1月から順に睦月(むつき)、如月(きさらぎ)、弥生(やよい)など月にちなんだ名前(和風月名)がある。

 和歌や俳句、小説をはじめ、吉田拓郎や桑田佳祐ら昭和・平成のアーティストも月にちなんだ名作、名曲を紡いできた。狼男の伝説が古典の西洋では満月を忌み嫌うともいわれるが、日本人は昔もいまも、丸い月の美しさに心を奪われる。

 あす10日は中秋の名月。子どもが「取ってくれろ」と泣くほどの美しい姿を見せてくれるだろうか。(静)