絵本を手に作者の石橋さん

 印南町印南の石橋理代さん(69)が先月、絵本「レオちゃんがびょうきになったんだって」を文芸社から出版した。学校のいじわるな子がコロナになって学校を休んでしまうというストーリーで、感染症を正しく理解することや、どんな人がコロナになっても思いやりの心を持つ大切さを教える本となっている。石橋さんは「少しでも優しい心が広がる世の中になれたらという願いを本に込めました」と話している。

 コロナがはやり始めた2020年の春ごろ、石橋さんは感染した人への周囲の批判や冷たい反応を肌で感じ、「コロナで大人たちが批判し合ったら、子どもたちが世の中を怖がってしまうのではないか」と思った。長年、人権擁護委員を務めていたこともあり、大人の視点から「怖がらなくても大丈夫」というメッセージを発信しようと、ストーリーを考えた。

 物語は猫の学校が舞台で、いじわるな女の子のレオちゃんがコロナで学校を休むところから始まる。レオちゃんにいじめられていた猫たちも最初は喜ぶが、次第にレオちゃんが心配になり会いたくなってくる。元気になったレオちゃんも、温かく迎え入れてくれる皆を見ていじわるをしなくなるという内容で、周囲の心の変化を繊細に捉えている。

 絵本制作のきっかけは、昨年4月に行われた文芸社主催の「えほん大賞」への応募。ストーリー部門で入賞はならなかったが、1カ月後に同社から「ぜひ絵本にしませんか」と提案があった。絵は人権擁護委員で一緒に活動していたすさみ町の宇井清子さんに依頼、小学生の孫怜奈さんも協力した。

 本には「てあらいの歌」という、石橋さんの三男の敬三さんが作詞し、石橋さんが作曲した歌の楽譜もあり、子どもが楽しく歌いながら手洗いの仕方を覚えられる工夫も盛り込まれている。

 石橋さんは今回初めて絵本を制作。「出版社とのやりとりも大変で、家族の協力がなかったらできていないと思います」と振り返り、「この絵本を通して、人の役に立つことができたら」と話す。

 本はB5横上判、24㌻で、定価1320円(税込み)。地元の公民館に設置しているほか、ネットストア、近隣の書店でも取り寄せをすれば購入できる。