夏の甲子園が開幕。2連覇を狙う智弁和歌山、史上初の3度目春夏連覇を目指す大阪桐蔭、複数のコロナ感染者が出て今春の選抜大会を直前で辞退した京都国際など、地元大会を勝ち抜いた49校が顔をそろえる熱い戦いが始まった。

 今年の3年生は、コロナの感染拡大でセンバツが中止になった年に入学し、コロナと共に高校生活を歩んだ。この夏、スポーツニュースで甲子園出場が決まったという報道が続々と全国から寄せられたとき、印象的だったのが、奈良大会の決勝。結果は21対0で天理が圧勝。対戦相手の生駒は体調不良者続出でベストメンバーで臨むことができなかった。天理は大差で迎えた9回2アウトに選手だけでタイムを取りマウンドに集合。主将の戸井零士君が「試合後に喜ぶのはやめとこう」と提案。試合終了時、選手がマウンドに駆け寄り抱き合ったり、歓喜の声を上げたりせず相手チームの心情に配慮した。目指してきた甲子園出場を決め、最高にうれしい瞬間のはずだが、コロナという敵と戦い、苦しんできた中で、野球ができる喜びや相手を思いやる気持ちを育ててきたのだろうと胸が熱くなり涙が出た。

 野球に限らず、高校生のスポーツ特集番組などで、最後の試合に負けたチームに監督が声をかけたり、勝ってうれし涙を流したりするのを見るだけで泣けてくる。限りある時間の中で、真剣に競技に向き合い、頑張ってきた姿だから人を感動させる。

 今回の甲子園は、組み合わせ抽選時、集団感染とされる4校が8日目に初戦を迎える措置がとられたが、その後も感染が広がるチームが増加。試合の日程調整には限界があるだろうが、どのチームも最高の舞台で完全燃焼できるよう祈っている。(陽)