世の中はいつも変わっているから 頑固者だけが悲しい思いをする――。恥ずかしながら、キャッシュレス決済の流れに乗り遅れ、いまだ買い物は現金という生活の中で、中島みゆきの昔の歌が身に沁みる。

 先日、電車で大阪へ出かけた。天王寺までの切符は事前に駅で購入。御坊はまだみどりの窓口があり、駅員さんに用意してもらったが、会員登録のネット予約を利用すれば特急券がぐんと安くなる。

 改札でその紙の切符を機械に通す際、ほとんどの人はICカードをかざして通過していた。電車は年に2、3回しかない乗らない田舎者は緊張を押し殺し、無事に到着することができた。

 地下鉄はすべての駅にホームドアが設置されたぐらいでとくに驚くことはなかったものの、目的地の梅田の劇場の入り口でふと周りをみれば、紙のチケットを手にしているのは自分だけ。ほとんどの人がスマホをカウンターに置くQRチケットだった。

 国が推し進めるキャッシュレスは、スマホ決済のいわゆる「ペイ」が急速に広がり、コロナ禍で非接触のコンタクトレス、タッチレスが進んでいる。この点、久しぶりの都会の休日は楽しい半面、時代に遅れていることをチクチク感じ、妙なストレスを受けた。

 人気のGoToキャンペーンやリフレッシュプランも、利用すれば得なのは分かるが、割引の仕組みや利用の仕方がいまいちよく分からない。JRのネット予約と同じく、登録の煩わしさがお得感より先に立ってしまう。

 戦争も飢饉もない平和な日本とはいえ、都会の喧騒はある意味、祇園精舎の鐘のよう。ICTが進化する諸行無常の世の中、筆者のような無精者はやはり悲しい思いをするのかも。(静)