先日、日高川町内で小麦栽培に取り組む生産者を取材した。

 子どもに安心、安全な食を提供したいと昨年から小中学生が給食で食べるパンを作るため農薬・除草剤不使用で栽培を開始。収穫してできた小麦粉を使ったパンを町内の子どもたちに届けた。2シーズン目となる今季は、この話を聞いた地元農家から、休耕地を使ってほしいと託され、畑を1・5倍に増やし9000平方㍍で栽培している。しかし、定期的にパンを提供できる量にはほど遠く、もし生産量が十分にあったとしても、国産・県産小麦は高価で給食費では賄えないのが大きな課題となっている。

 日本の食料自給率は2020年度で37%と低く問題視されており、なかでも小麦は9割近くを輸入に頼っている。8割以上はアメリカ・カナダから入ってきており、今季は北米の小麦が不作で価格が高騰しているという。小麦輸出国は1位がロシア、5位がウクライナで、日本はどちらからも輸入していないが、今後のウクライナ情勢によっては、世界の小麦価格が上昇する可能性も指摘されている。小麦は品種改良が進み日本でも育ちやすくなったので、パン、うどん、パスタ、菓子など小麦食品が溢れる今、米のように自給率100%に近づけるのが理想的。

 世界中で異常気象や天候不順が起こった場合や、人口増加、国際情勢の変化などで輸入が制限されることになれば、日本はあっという間に食料不足に陥ってしまう。食料自給率を支える農業生産者は後継者不足で減少していくばかり。儲かる農業の仕組み作りなどに力を尽くされているが、消費者も目先の価格だけで判断するのではなく、安全性や将来の食の安定を考え、購入するものを選ばなければならないと痛感した。

(陽)