「読んでって&持ってって&持ってきて」という、本好きの心をくすぐる企画が御坊市内で立ち上がっている。古代文化顕彰等の活動に取り組む東睦子さん(御坊市岩内)が発案。「ブックリボーン」と銘打って、読まなくなった本をリサイクルできる場を常設しようという試みだ◆きっかけは、テレビである報道をみたこと。純文学など活字の本に親しんできた世代が終活を始め、膨大な蔵書を整理するため段ボール箱で何箱分も処分している。東さんはその映像を目の当たりにし、「あまりにももったいない」と行き場のない書籍を引き受ける場づくりを決心した。自宅近くの倉庫を「YO―MO house」として改修。コンテナを本箱にし、訪れた人がゆっくり読めるよう机と椅子も設置する。コロナ禍の影響で実際の運用はいつになるか未定だが、4月に記事で紹介してから2カ月近く、問い合わせや「本を受け入れてほしい」との依頼が相次いでいるという◆簡便さから、電子書籍の普及は加速度的に進んでいる。文字情報さえ得られれば小説でもエッセイでも画面上で読めるのだから、読み手としては何も不都合はないかもしれない。しかし、この世のすべての文学作品が書物という「体」を無くし、文字情報のみでネット上に存在している状況を想像すると、何か空恐ろしいものを感じる。子どもの頃に親しんだ「世界の文学全集」。赤い箱からずっしりと重く分厚い中身を取り出し、子どもには大きなページを開いては色とりどりの挿し絵を眺め、紙の匂いを嗅ぎながら、いろんな国の物語に夢中になった。あれを思い出すと、本は宝物だと思う◆筆者自身も利用するのを楽しみにしている。本の処分を考えている方、もう少し待っていただきたい。(里)