日本の男子マラソン界に、新しいスターが誕生した。28日に開かれた「びわ湖毎日マラソン」で大迫傑選手が持っていた2時間5分29秒の日本記録を33秒縮め、2時間4分56秒という大記録で優勝した鈴木健吾選手(25)である。日本人初の4分台ランナーの誕生で、1㌔のペースなら約2分58秒、単純計算で100㍍を17秒8で走り続けるとなると、その凄さが伝わるだろう。世界では歴代57位のタイ記録というのだから世界は広いが、差は着実に縮まっている。

 ここ数年は記録更新が相次いでいる。2018年2月に設楽悠太選手が2時間6分11秒を出してこれまでの記録を16年ぶりに5秒更新したのを皮切りに、同じ年の10月に大迫選手が初の5分台となる5分50秒、さらに昨年3月に自身の記録を更新して5分29秒を出した。そして鈴木選手の快走。わずか3年で1分20秒も記録が縮まったのは、シューズの性能がよくなったことも一つだろうが、日本長距離界の選手層の厚さ、競走力が高まっているからだろう。東京オリンピックをはじめ、4年後のパリ五輪と、これからレースごとにスターが現れるかもしれない。

 日本のレベルアップの陰には箱根駅伝の存在も大きいだろう。少し前までは箱根完結型などともいわれていたが、近年は箱根からフルマラソンで活躍する選手が目立つ。設楽、大迫、今回の鈴木選手もそうだ。箱根を目標に陸上を頑張る小中学生もたくさんいる。これからは箱根、そしてマラソンへと大きな夢を描いて陸上に取り組む子どもたちが増えるかもしれない。日高地方の子どもたちにももちろん可能性はある。コロナ禍の中、明るい話題に触れ、胸がすっとした。やはりスポーツはいい。(片)