写真=新聞配達の自転車に乗る釜中さんと大前所長

 ひきこもりの若者の回復支援を行っている美浜町のNPO法人ヴィダ・リブレ(宮西照夫理事長)の取り組みが、12日に放送されるNHKのドキュメンタリー番組で取り上げられる。若者たちと企業をつなぎ、社会復帰を目指してもらう取り組みで、御坊市の産経新聞御坊販売所(大前章浩所長)で働く釜中隆行さん(34)を紹介。大前所長(36)も「多くの方に見ていただき、こういった輪が広がれば」と話している。

 番組はNHK総合で12日午後7時30分から55分まで放送の紀の国スペシャル「心の距離を超えて~コロナ禍 ひきこもりたちの挑戦~」で、コロナで社会へ出るきっかけが激減したひきこもりの若者たちについて、和歌山では地元企業とつながりを持つことで社会復帰を支援する活動が進んでいるとして、現場の最前線を追う。ナビゲーターは俳優の山崎樹範が務める。

 番組で紹介するのは、ヴィダ・リブレと産経新聞御坊販売所が連携しての取り組み。釜中さんは1年半ほど前からアルバイトとして勤務しており、週6日、地方紙の折り込みや自転車での新聞配達を行っている。職場は年上の人が多いなか、気さくに会話し、気遣いも。いまでは集金も任されるようになり、明るく、前向きに働いている。

 釜中さんは地元御坊の出身で、高校時代から10年以上自室にひきこもり、母親の勧めで2019年春、ヴィダ・リブレの同じ境遇を持つ仲間との交流の場に参加。長年インターネットでは人とつながっていたが、家の外でリアルの他人と話すのは久しぶりだった。そこで知り合ったのが大前所長。大前所長も中学時代に不登校の経験があり、ヴィダ・リブレの活動に関心があって見学していた。

 何度か参加し、交流するなか、人手不足に困っていた大前さんから声をかけられ、働くことを決意。19年夏から働き始めた。プライベートでの外出も増えて休日にはカフェや地元のイベントへ。「こんな面白いことがあったのに、もったいないことをしていた」と笑う。

 大前所長は釜中さんの他にもう1人、昨年春から宮西理事長の紹介で社会復帰を目指す男性を雇用。「自分も助けてもらったので、地域に恩返しができたら。特別なことはしていませんし、支援という感じはありません。力になってくれていて、こちらが助かっています」と笑顔を見せ、「悩んでいる人と働く場のつながりの輪が、もっと地元企業さんへ広がれば」と話している。