芸能人の自殺が連鎖的に続いている。順風満帆に見えるキャリアの裏で、プライベートにどんな悩みを抱えていたのか、私生活にどんな事情があったのかは分からないが、人気者の突然の訃報がやりきれない。

 今年4~6月期の実質GDPは3四半期連続のマイナス成長、さらに年率換算のマイナス幅はリーマンショック直後を大きく上回った。コロナによる経済の落ち込みとともに、ここにきて自殺者が急増しているという。

 一般的に、景気が冷え込むと失業者が増え、先行き不安から心身の健康を損ね、経済的困窮も重なり自殺する人が増えると考えられている。コロナ禍の今回も、自殺者数と失業者数が比例する過去の統計から,自殺増を危惧する声は多かった。

 1990年代はじめのバブル崩壊以降、国内景気はかつての勢いを取り戻せず、アベノミクスで株価が上昇、雇用環境は大きく改善し、地価も下げ止まりの兆しをみせつつあった矢先のコロナショックである。

 75年前、日本は建軍以来、初の敗戦を経験し、世界の最貧国にまで落ちたが、戦後は砂をつかんで立ち上がり、所得倍増、列島改造のスローガンの下、奇跡の復興を遂げ、世界2位の経済大国にまで成長した。

 二度と戦争を繰り返すことなく、国民は渇望した平和と自由、豊かな暮らしを手に入れたにもかかわらず、ここにきてなぜこれほど個々の生きる力が弱っているのか。自分の命も他人の命もあまりに軽い。貧しい戦中、終戦直後の人たちの方が命はずっと重かったのではないか。

 人口減が続く。もはやGDPの成長などありえないという見方もあるが、ジリ貧時代の現状に目をつむることなく、暗い夜道の小さな光に向かって歩いていこう。(静)