菅内閣が発足した。菅さんは、安倍前首相の女房役としてあまり目立った存在ではなかったが、堅実に政権の運営をこなしていたイメージ。桜を見る会の問題ではやや苦しい答弁もあったが、真摯(しんし)な姿勢に好感が持てた。

 そんな一見大人しそうな菅さんが、会見で「縦割り行政をぶち壊す」と言っていたのが印象的。かつて小泉純一郎さんが「古い自民党をぶっ壊して政治経済の構造改革を行う」と過激にも取れるフレーズで自民党総裁になったことを思い出す。「ぶっ壊す」とまではいかないが、「ぶち壊す」という表現を使うあたり、菅さんが掲げる規制改革への強い決意の表れであり、それでいて国民から親しまれる〝令和おじさん〟らしい、少し和らげた表現だ。

 菅さんと言えば秋田県雄勝郡秋ノ宮村(現湯沢市秋ノ宮)のイチゴ農家の長男として生まれた。高校卒業後には「東京に行けば何かが変わる」と上京し、段ボール工場で働いたが、現実の厳しさを知り退職。大学に進学するためアルバイトしながら勉強し、法政大学法学部政治学科に合格。卒業後、会社勤めも経験したが、「日本を動かしているのは政治」と政治に興味を持ち、大臣秘書、横浜市議を経て、1996年の衆院選に立候補して初当選している。

 世襲議員ではない、いわゆるたたき上げ。地方で育ったがゆえに地方の痛みや苦しみを理解して、和歌山のような地方の発展にも力を注いでくれるはず。そんな菅政権では、二階幹事長と世耕参議院幹事長が続投。和歌山からそろって再び重要ポストを担うことになり、これ以上ない県勢浮揚のチャンスが来ていると感じる。(吉)