日高地方で撮影された映画、「ソワレ」が全国で公開されている。御坊市で開かれた試写会を取材し、さらに公開初日に劇場へ見に行った。同じ映画を2回見るのは久しぶりだが、よりよく内容が入ってくるのでもう一度見てよかったと思う◆無料でもらえる「ロケ地マップ」のほか、映画を見る時は必ず買うことにしているパンフレットも購入。早速ページをぱらぱらと繰って「このすごい量の文字情報は何?」と驚いた。内容紹介、役者のインタビューがあるのは通常通り。さらにこの「ソワレ」のパンフには、製作側の豊原功補さん・小泉今日子さん・外山文治監督の鼎談、豊原さんによる「プロダクション・ノート」、外山監督の「監督活動日誌」がある。企画が持ち上がってからの日々、撮影期間の3週間、その間のことがびっしりと克明につづられる◆読み通すにはかなりの時間を要したが、ロケ地の地元民としては興味深い言葉、うれしい言葉が満載。「あのシーンにはそういう意味があったのか」など発見の連続で、3度目を見たくなってきた◆煙樹ケ浜の「朝焼け」を撮る一発狙いの撮影では、「青い光のきざしが見え始めてからは、あまり記憶がなく、全員ものすごい勢いで走り出して撮影を開始。本当に凄い空と海の色だった」と記述。一つ一つのシーンに懸ける作り手の思い入れを知り、「いつも見ている身近な風景がこんなにも『美しい』と感じてもらえるのか」と驚く◆映画や小説など物語に触れるのは、人が知らずに持ついろいろな部分と対峙することでもある。「ソワレ」は娯楽作品というより、本気で向き合うべき一つの芸術作品。その重要な要素として、御坊日高の海の色や松林の木漏れ日がある。我々が知らずに持っていた宝を、違う目で見るいい機会である。(里)