日高川町入野の田土池(たどのいけ)で、大正時代から植えられているハスが多くの花を咲かせている。23日朝には30輪ほどが確認され、池のほとりに住む古田義信さん夫婦は「盆を過ぎてこれほど多くの花が咲くのは、私たちが世話をしてから初めて」と話している。

 入野区が管理する周囲40㍍ほどの旧農業用水池で、現在は使われていない。ハスは、古田さんの父の義一さんが中学生の頃、買ってきたレンコンに石をくくりつけて池に放り込んだものが定着。100年ほど咲き続けている。

 今になって多くの花を咲かせた理由について、和歌山大賀ハス保存会会長の阪本尚生さんは「長い梅雨で成長が停滞していたところに、記録的な高温と長時間の日照で成長が促進されたのでは」と分析している。ハスの品種は不明。花の色はピンクで、条線のはっきりした大輪を咲かせる。直径は30㌢を超え、大きなものでは40㌢近くになる。

 阪本さんは「大阪府の天然記念物の原始蓮に似ています。おそらく在来の地蓮系統ではないかと推測しますが、100年間にわたり狭い池で自家交雑を繰り返してきていますので、この池独特の品種として遺伝的に固定されていると思われます。古田蓮、田土の蓮、入野蓮といった名称がふさわしいのではないでしょうか」と話している。つぼみもたくさんあり、9月上旬まで花がみられそう。

 古田さんの祖父の幸吉さんは南方熊楠のいとこに当たり、神社合祀反対運動にも協力したという。

写真=田土池で咲いた大輪のハス