「2020 夏 高校野球和歌山大会」が和歌山市の紀三井寺公園野球場で開催され、県内の39チームが熱戦を展開した。日高地方勢も活躍し、日高は準決勝で智弁和歌山に敗退したものの4強に入る大健闘。日高中津、和歌山高専も準々決勝まで勝ち進み、8強入りを果たした。紀央館、和歌山南陵、南部龍神も初戦を突破。南部は初戦で智弁和歌山に惜敗したが、強豪相手に全力を出し尽くした。

 「近年は相手を思いやる日本人の美徳が失われがち」と言われることがある。今大会に限ったことではないが、高校野球には日本人の心があるのではないかと取材を通じて感じた。自分を犠牲にして走者を進塁させる送りバント、チーム全員が力を合わせて勝利に向かう光景は「和」。勝っても負けても試合終了後には整列してお互いをたたえ合い、拍手を送り合うことは「礼節」。

 試合以外でも球児たちが帽子をとって見ず知らずの筆者にあいさつしてくれたし、試合後のインタビューでは「楽しく野球できたことに対し、みんなに『ありがとう』と伝えたい」と、感謝の言葉で表す選手もいた。まさに日本人の美徳といえるのではないか。それは野球に限ったことではなく、柔道、バレーボール、サッカーなどスポーツ全体にいえることだろう。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で夏の選手権大会が中止になったことを受け、代わりに開かれた今回の大会。スタンドの応援も制限され、いままでの大会とは雰囲気も異なった。しかし、野球を通じて見せた球児たちの日本人としての心は例年と変わることなく、プレーや振る舞いで感動を与えてくれたことは間違いない。(雄)