新型コロナウイルスの感染者が日に日に増えている。もはや第二波といえる状況にも見える。経済活動を維持しながら感染者を減らすのは至難の業、まして国の観光支援事業「GoToトラベル」キャンペーンがスタートし、人の動きがさらに活発化すれば感染が広がるのは当然だろう。感染防止も大事、経済を回すのも大事、どちらにどれだけの比重を置いてバランスを取るのか、悩ましい問題だ。医療現場のひっ迫度を最重視しながら、感染者増を少しでも緩やかにして死者を出さずに経済を回す、一見矛盾しているようだが、それを実現に近づけるのが新しい生活様式なのだと思う。

 本来なら、24日は東京五輪開幕日だった。23日には国立競技場でイベントが行われ、白血病から競技復帰を目指している水泳の池江璃花子さんがメッセージを発信した。「世の中がこんな大変な時期にスポーツの話をすること自体、否定的な声があることもよくわかります。ただ、逆境から這い上がっていく時にはどうしても希望の力が必要です。希望の光が遠くに輝いているからこそ、どんなにつらくつても前を向いて頑張れる」。アスリートの率直な思いに大いに共感した。

 ただ、まだ続くコロナ禍、希望の光が見えないほど苦境に立たされている人もたくさんいる。だからこそ、経営がひっ迫している事業者や医療現場にはもっと国が実情に応じた手厚い支援を行うべきだろう。池江さんのメッセージからもう一つ借りる。「1年後、オリンピックやパラリンピックができる世界になっていたら、どんなに素敵だろう」。1年後、日本国民あげて心の底から五輪開催を喜べるよう、今、自分に何ができるか、考えて行動したい。(片)