日高川町初湯川地内で昨年暮れに再挑戦が始まったササユリ復活の取り組みが順調だ。2014年秋、国内最長の「藤棚ロード」に続く観光スポットとして、日本一の花の里を目指して活動を開始したが、2年連続イノシシの食害のため、かれんな薄ピンクの花はほぼ見られなかった。5カ月前、地元住民らのグループが獣害対策を講じて2年ぶりに球根を植えたところ無事に成長、一部でつぼみもつけており、早ければ今月下旬から開花が始まりそうだ。

 ササユリの里づくりに取り組んできたのは農家、町、JAなどで組織する日高川町ササユリ普及育成協議会(三原康弘会長)。14年秋から17年秋までみやまの里森林公園藤棚ロード入り口付近に毎年1500個以上の球根を植えてきた。初開花となった15年6月ごろには1000輪を超える花が楽しめたが、3年目ごろからイノシシが球根を掘り返す被害が目立ち始め、2年前の18年は壊滅状態。有効な対策を考えられなかったため同年秋の球根植えを中止し、昨年も花はほとんどなかったという。

 森林公園内は安全や景観への配慮で電気柵を設置できない。これまでの防鳥ネットなどの対策では効果がなく、協議会では「場所の移動」を検討し、イノシシが立ち入れない、球根を掘り返せないと思われるブロック壁のスペースに着目した。

 ブロック壁は、藤棚ロードや美山温泉愛徳荘に通じる美山産品販売所東約30㍍の町道沿いの斜面に設置されている。高さ約50㌢、空洞に土が入れられている各ブロックは上部をプランターとして活用でき、地理的に問題ない、午前中に日当たりがよく生育にも適しているとして、ササユリ復活再挑戦の場所に決めた。

 ブロックが最大で9段、30㍍ほどにわたって積み上げられた壁には昨年12月3日、協議会の会員らが1000個ほどの球根を植えた。今月5日現在、30~50㌢程度に成長したササユリは数百本あるとみられ、一部ではつぼみもつけるなど獣害対策が奏功している。

 ササユリに詳しく、協議会の事務局も担っているバイオセンター中津(高津尾)の小早川勇センター長は、現場の様子を写真で確認。「イノシシの被害はいつ発生するか分からないので油断はできないが、このままいけば今月下旬から6月中旬に花が見られるのではないか」と話している。新型コロナウイルス禍が落ち着いていれば、3年ぶりに花の観賞が楽しめそうだ。

写真=ブロック壁で順調に育つササユリ(5日)