和歌山高専生物応用化学科の楠部真崇准教授(42)が漁場回復に向けた藻場の復活へ、日高町の方杭漁港で行っているアマモの定植実験は、12月にまいた種が10㌢程度の海草に成長。このまま成長し、種を付ければ成功となり、エコで低コストな藻場再生法として期待されている。

 藻場は海草や海藻などの群落。エビや小魚のすみかとなっているが、近年の海水温の変化などで減少。それに伴い、エビなどを餌とする魚の漁獲高も減り、漁業への影響が懸念されている。

 藻場の復活の取り組みは各地で行われており、種を麻のシートに編み込んだマットを敷いたり、プラスチックポットなどを使った再生活動が行われているが、ダイバーの人件費や海洋ゴミの影響で広く普及していなかった。

 そんな中、楠部准教授は微生物の力で砂を固めるバイオセメントに着目。海の砂と海中にいる微生物を使ってセメントを作り、アマモの種子が入った直径2㌢程度の球体「アマモボール」を作製。海中にまくことで、海底でアマモが育ち、バイオセメントは少しずつ分解され、最終的に砂に戻る。ダイバーの力を借りなくても、陸上や船の上から簡単にまくことができる。

 水槽などを使った実験ではアマモの成長を確認できており、方杭漁港では昨年12月に30㌔分をまいた。定期的に潜水し成長を確認しており、このほど約10㌢まで育っていることを確認。今後も順調に生育し、種がついていることが確認できれば成功となり、次のステップへ進む。早ければ6月ごろには確認できるという。

 楠部准教授は「このまま順調に生育が確認できれば漁港内で実験範囲を広げたり、新たな海草でも取り組んでいきたい。将来的には各地の藻場復活に役立てたい」と話している。

写真=10㌢まで育ったアマモ