みなべ町の前町長の山田五良さんは「選挙は三途の川を渡るようなもの」と表現したことがあった。「必死になって川を泳いで渡ろうとするが、途中でうまくいかず、もがき苦しむ。最後にもうダメかと思った時に助けの手を差し伸べてくれる」と、自身が体験した過去の選挙戦を振り返りながら話した。20年ほど前に雑談の中での話だったが、選挙に立候補したことがない筆者にとっては興味深く、いまでもその時のことは鮮明に覚えている。

 由良町で26日、町長選、町議会議員補欠選が行われた。町長選は3人が立ったが、元議会議員の山名実氏(63)と馬場博文氏(56)との事実上の一騎打ち。山名氏が馬場氏を僅差で下して当選した。今回の選挙戦は新型コロナウイルスの拡大で、緊急事態宣言が発令される中での執行。3密(密集、密閉、密接)の回避が呼びかけられ、集会活動などの制限が余儀なくされた。候補者の中には思うように公約などを伝えきれなかったり、心意気などをアピールしきれなかったりした人もいたかもしれない。5日間という短期決戦だったが、まさにもがき苦しんだ戦いとなったのではなかろうか。

 告示前、本紙は有権者100人にアンケート調査を行った。理想のリーダー像は「実行力」がトップ。2位は「リーダーシップ」だった。「いくらいい政策、いくらいい人柄であっても実際に行政を動かし、組織をまとめてもらわないとリーダーとは言えない」というのが理由だ。

 由良町にはきれいな海や豊かな山などがある半面、人口減や町財政などの行政課題もある。次期リーダー次第でまちの未来は大きく変わる。これからの4年間は三途の川を渡るよりも厳しい。(雄)