「防災の日」の1日、NPO法人次世代エネルギー研究所と印南町が高串の切目川ダムなどで災害対応のドローン(小型無人機)実証実験を行った。災害で孤立した地域を想定し、情報伝達手段となる衛星携帯電話や心肺蘇生のAED(自動体外式除細動器)などの緊急支援物資をドローンで空輸して検証。迅速かつ安定して運ぶことができ、災害時に有効な搬送手段であることが確認された。

 会場には同研究所のメンバーや町職員、町消防団員、一般住民ら約100人が来場。開会セレモニーでは同研究所の高木浩一理事長が「印南町はドローン隊を発足させ、隊員(操作技術者資格取得者)が20人いる先進自治体。きょうの検証結果を他の市町村に発信していただきたい」とあいさつ。日裏勝己町長は「住民の皆さんが安心して過ごせるよう訓練してほしい」と述べた。

 実証実験では、協力会社のスカイシーカー(東京都)がドローンを操作。切目川ダムから下流約650㍍にある田ノ垣内の旧真妻保育園まで飛ばした。ドローンの下部には収納ボックスが装着されており、重さ最大6㌔まで搬送が可能。最初に無線0・4㌔と衛星携帯電話0・25㌔の2つ、続いてAED2・5㌔を入れて飛ばしたところ、いずれも安定して飛行し、5分ほどで目的地に到着。荷物を降ろし、再び切目川ダムの会場に戻ってくると、見物人から拍手が起きた。

 スカイシーカーによると、ドローンは災害に有用であるとされるが、実証実験があまり行われていない。また、国の規制でドローンや荷物の総重量を25㌔以内に抑えなければならないため、今回のドローンが搬送用では最大規模となる。

 旧まづま保育園では、日高広域消防のAED講習も実施。最後に平尾潔司教育長が「ドローンは孤立集落が発生した場合の物資輸送に役立つ。正しい情報の伝達が減災、犠牲者ゼロにつながる。訓練は年1回ではなく、定期的に行うことが大切」と総評した。

 この日、切目川ダムの会場では町社会福祉協議会と日赤奉仕団が非常食の炊き出し訓練も行い、アルファ米などを振る舞った。前日の夜には印南漁港でドローンによるサーチライトでの捜索や音声での避難勧告も行った。

写真=切目川ダムの会場から飛び立つドローン