太平洋戦争では、約310万人の日本人の尊い命が奪われた。敵弾に撃たれて倒れたり、特攻で命を失ったりした軍人、一般人も空襲などで多くの命が犠牲になった。その一人一人のはかない人生は想像に耐え難く、残された家族もつらい思いで過ごしてきたことだろう。

 今月15日は、終戦記念日だった。テレビ、新聞などのメディアで当時の史実が報道を通じて伝えられた。本紙でも「終わらざる夏」が連載されたほか、今月11日には創刊90周年事業として「戦争を平和を考える講演・映画上映会」が開催された。 講演の講師は、田辺市龍神村殿原の古久保健さん(80)。1945年の終戦間際の5月5日、地元で墜落した米軍爆撃機B29の目撃した体験を元に語った。映画は、古久保さんの体験から制作された「轟音」が上映された。住民が亡くなった米兵の慰霊碑を建立したり墜落したB29の残骸調査を行ったりした様子がドキュメンタリーの形で紹介された。後半部分では、墜落直後に命を失った米兵トーマス・クローク少慰の妹であるエリザベスさんがフロリダに住んでいることを知り、古久保さん夫婦が2013年にアメリカに渡米して面会したという内容が紹介され、クローク少慰の変わり果てた姿を古久保さんが言葉を詰まらせながら説明するというシーンには心が打たれた。

 古久保さん自身も母親のお腹の中にいる時に父親が中国へ出征して戦死。父の顔を知らずに育った。それだけに、戦争で肉親を亡くした家族に対する思いが強いのだろう。

 筆者も仕事を通じて観賞した。生きている人の命は何よりも尊い。そして、失われた命も何よりも重い。講演と映画から、改めて考えさせられた。(雄)