猛暑の夏も盆を過ぎて、ほんの少し日差しがやわらいできたか。11日には戦争と平和を考える講演・映画上映会を開催、15日には戦争体験者に聞く連載も終わった。創刊90周年の今年は記念事業が多く、すでに1年分の時間が過ぎたような気がする。

 7年前、真珠湾攻撃から70年を機に、いまも続く戦争体験者に聞く連載を開始した。そのとき、取材で話を聞かせていただいた2人が先日、相次いで亡くなられた。御坊市の野村浚一さんと美浜町の小松雅也さん。野村さんは97歳、小松さんは87歳だった。

 お2人の話は新聞連載のほか、戦後70年プロジェクトとして発行した書籍「その日がくる前に」にも収録させていただいた。それぞれ反響は大きかったようで、新聞と本の発行後にはお2人から懇切丁寧なお礼の手紙が届いた。

 2年前の1月には、思いがけず野村さんからメールが届いた。ご自身の体験が活字となり、本になったことへの喜びと感謝が綴られ、最後はやや自虐的に「加齢による難聴、緑内障による右眼視力半減、脚筋力半減歩行困難な95歳老人のお礼と近況まで。年賀状二枚となりて戦友会 浚」と結ばれていた。

 小松さんは3年前、鹿児島の知覧特攻平和会館で行われた慰霊祭で、全国の遺族を代表して慰霊の言葉を述べられた。沖縄戦で散華した兄との最後の別れを振り返り、「私たち遺族は特攻勇士の尊い若い命の重さ、犠牲となられたことを心に深く秘め、国内外の恒久平和に努力する」と声高らかに誓われた。

 戦争の「せ」の字も知らないまま大人になった筆者に訥々と、真剣に語ってくださった野村さん、小松さんらのご冥福を祈りつつ、その言葉をしっかりと書き残し、伝えていくことをお誓いしたい。(静)