御坊市名田町の社会福祉法人博愛会(小林隆弘理事長)は16日、介護員の腰痛予防対策として、一般社団法人日本ノーリフト協会(神戸市)の研修会を県内初開催した。腰への負担を減らす介護の動作や機器の活用などを指導する研修。9月には利用者を持ち上げる福祉機器のリフトの本格導入を予定しており、介護員の負担軽減を目指す。

 福祉施設の現場では、利用者1人につき、一日10回程度ベッドから移動することがあり、そのたびに介護員が抱きかかえたりするなどして対応。1人の介護員で複数人の利用者を対応するため、一日数十回抱きかかえるなどの動作を繰り返し、腰痛は職業病とも言われている。腰痛による長期休業者は全国的に増加傾向、博愛会でも増加しており、今後の職員の高齢化も踏まえて深刻な問題となっている。

 ノーリフトとは1998年にオーストラリアの看護連盟が看護師の腰痛予防のために提言し、日本では2009年に協会が設立。腰への負担の少ない介護動作や、福祉機器を活用した負担軽減方法などを提唱しており、全国各地で研修を開いている。博愛会の研修ではすでに日本ノーリフト協会の研修を受けた介護員が講師となって、他の介護員に指導した。

 研修ではさまざな場面を想定し、腰に負担がかからない動作を紹介。座った利用者を立たせる方法では、従来の前から引っ張る方法でなく、利用者の体を前後に揺らすなどして利用者自らの力も使って立ち上がらせる方法などを説明した。

 福祉機器の活用方法では、同会が特養日高博愛園に2016年に4台導入した床走行式介護リフトで説明。利用者の下にシートを敷けば、後は機械操作のみで車椅子などに移動することができる。導入後、介護員から好評で、利用者のお年寄りからも「人力よりもいい」などの声があるという。同会ではノーリフト化へ向け、同様のリフトなどを新たに16台購入し各施設へ配備する。

 小林理事長は「職員の健康を守る職場づくりを進めることで、利用者の皆さんにも安心して介護を受けてもらえる環境にしていきたい」と話している。

写真=ベッドから移動させるリフトを実演