御坊以南のJRきのくに線等を舞台にした芸術イベント「紀の国トレイナート」が、18日から開幕する。5年目のことしはJR以外の鉄道で初めて、日本一短いローカル私鉄で有名な御坊市の紀州鉄道が参加。古い駅舎が人気の西御坊駅を、芸術家の岩塚一恵さんが繊維を使ってアート空間に演出。19日には岩塚さんと一緒に地域を巡る「ダイブ」もあり、御坊の魅力を発信する絶好の機会となりそう。

 紀の国トレイナートは、紀伊半島を海沿いに走るJRきのくに線の駅舎をアート空間に変容させるアートプロジェクト。全国のアーティストが地域の魅力を掘り下げ、地域活性化にもつながると年々人気を集めている。ことしはこれまでと趣向を変え、駅を拠点に周辺の地域を巡って深く潜っていく「ローカルダイブ」を初開催。アーティストと一緒にまち巡りを楽しみ、地域の魅力を感じてもらう。

 紀州鉄道西御坊駅を装飾した岩塚さんは、東京文化学園大学造形学部助教で、学生にデザインと芸術を指導している。もともと建築を学んでいたこともあって古い建物やまち並みが好きで、トレイナートには昨年初めて参加し、JR岩代駅を担当した。

 西御坊駅は、得意の繊維を使ってアート空間に仕上げた。御坊がかつて紡績業で栄えたことと、海に近く漁師の営みを合わせて「歴史を表現」した。作品名は「ファイバーダンス」で、ミシン糸や釣り糸を使って手編みし、西御坊駅の古いたたずまいを生かすよう心がけた。ピンク色は、目を引くよう直感で決めた。岩塚さんは「地域の人にいろいろ話を聞かせてもらいましたが、みんなこの駅が大好きだという思いが伝わりました。ただ、身近すぎて特別だとは感じていない人もいた。私のように外から見ると歴史を感じ、すごく魅力的で特別な存在。今回のアートを通して西御坊駅を大事に思ってもらえるとうれしいし、この駅舎がずっと残っていってほしい」と熱い思いを披露。19日のローカルダイブはJR御坊駅に午後1時集合し、レトロなまち並みを散策し、終着の西御坊駅で作品鑑賞や岩塚さんのトークもある。「できれば浴衣を着てもらって、大正や明治のまちにタイムスリップした感覚で一緒に楽しみましょう」と気軽な参加を呼びかけている。

写真=西御坊駅をアート空間に仕上げる岩塚さん