1962年10月、キューバ上空を飛行していた米空軍の偵察機U2がミサイルらしきものを捉えた。撮影した写真を解析したところ、ソ連製の地対地中距離弾道ミサイル(NRBM)であることが分かり、翌朝、ケネディ大統領に届けられた。
 大統領はただちに国家安全保障会議を招集。副大統領や国務長官、国防長官、CIA長官、弟のロバート・ケネディ司法長官らのほか、前政権時の国務長官や国防長官も入り、表向きは平静を装いながら、不眠不休で最善の対応を協議した。
 ミサイルの写真がホワイトハウスに届いた朝から、ソ連のフルシチョフがミサイル撤去を決断するまで13日間。偵察機が撃墜されパイロットが犠牲となり、さらに別の偵察機が誤ってソ連領空を侵犯してしまうなど何度も危機に直面しながら、核戦争をすんでのところで回避した。
 いまから17年前、このキューバ危機の際の米国国家安全保障会議執行委員会(エクスコム)を描いた映画「13デイズ」が公開された。自由と民主主義の米国目線で描かれたドラマに感動したのを覚えているが、いまあらためて見直し、55年前以上に深刻な現実に背筋が寒くなる。
 J・F・Kとフルシチョフ。ケネディはキューバに対する自国の政策を反省、フルシチョフはスターリンの恐怖政治を否定するなど、それぞれに勇気と決断力があり、何よりも対立する核兵器国のリーダーとして、誤算を生む可能性を排除しようという思いが通じ合っていた。
 ひるがえって今日の米国と北朝鮮。大統領の破天荒さはいうまでもなく、相手も常識やルールが通じない。核戦争危機の映画といえば、「13デイズ」よりキューブリックの「博士の異常な愛情」を思い出す人の方が多かろう。(静)