白浜町の番所山の高台で建築が進んでいた南方熊楠記念館(新館)が完成し、19日午後1時からオープン記念式典が行われる。ことしは熊楠生誕150年にあたり、一般からの寄付(約3250万円)も合わせ約4億7500万円をかけて鉄骨コンクリート2階建てが完成。1階では記念館と国立公園の番所山を紹介、2階は遺品や映像で熊楠の生涯、研究実績を紹介する展示スペースとなっている。
 植物学、菌類の研究者として大きな功績を残した南方熊楠は、柳田國男と並ぶ民俗学の創始者としても知られ、記念館では生前の多くの文献、資料、標本、遺品などを保存・展示。平成27年は記念館開館50周年、28年は熊楠の没後75周年、ことしは生誕150周年に当たり、県は新しい記念館を建てるため、全国の熊楠ファンから建設費用の寄付を呼びかけ、おととし11月から工事が進められていた。
 施設の外観は、熊楠が大きな研究成果を残した「粘菌」のイメージから曲線を生かした設計。屋上は田辺湾や神島、白浜の温泉街、遠くは四国まで見通せる開放的なデッキ空間となっており、太平洋を360度のパノラマで眺望できる。
 1階は国立公園に指定された番所山のビジターセンターとして、円形状の吹き抜けロビーが入館者を迎え、採光のため建物の中心からつり下げられた筒状のオブジェ(ランタン)が設置されている。
 2階は①熊楠の幼少期から青年期②熊楠の海外での活躍③生物学者南方熊楠④民俗学者南方熊楠⑤研究生活と熊楠の晩年――の5つのテーマで展示を常設。総展示品数は約800点に上り、展示室前小ホールには保田龍門作の熊楠の胸像、世界一長い履歴書が展示されている。
 19日の開館記念式典には、施設を管理・運営する公益財団法人南方熊楠記念館理事長の仁坂吉伸知事、財団の理事、県選出国会議員、周辺市町村長ら多くの来賓が出席。テープカットや内覧、熊楠が愛したみかんの木の植樹などが行われる。