御坊市のオークワロマンシティで今月9日から15日まで、北方領土返還要求運動県民会議の北方領土問題に関するパネル展が開かれた。
 折しも、和歌山県選出の世耕弘成経済産業大臣が新設のロシア経済分野協力担当大臣の兼務を任命され、安倍首相とともにロシアを訪問した直後。12月にはプーチン大統領が日本を訪れ、首相の郷里の山口県で会談する。
 シェール革命で米国が世界最大の天然ガス産出国となり、米国に売れなくなった中東の原油は欧州へと流れた。宇宙開発と地下資源以外になんの産業も技術もないロシアは一気に得意先を失い、欧州に代わる天然ガス市場として日本にすり寄ってきた。
 日本にとってロシアは、終戦後、火事場泥棒的に北から攻め込み、いまなお軍事力をバックにわが国固有の領土である南樺太と北方四島を不法に占拠している国。先の女性北方担当大臣が「歯舞」を読めないなど、国民の関心は年々低下しながら71年が過ぎた。
 しかしここにきて、リオ五輪のマリオを地でいく安倍首相の超精力的な外交により、永久凍土のような領土問題がアイスブレイクした。ことし5月には両首脳が密室でサシの会談を行い、安倍首相はプーチン大統領に対し、新たな発想に基づくアプローチとして、8項目の協力プランを示した。
 相手は価値観を共有する国ではないが、日本にとって領土問題を進展させるには、敵の経済が回らないいまが最大の好機。首相のお膝元での会談では、日ソ共同宣言(二島返還)を基本線に平和条約、領土問題を話し合うことが決まっている。
 安倍―世耕の強力タッグで四島一括返還の「一本」は無理としても、最低でも分割返還の「引き分け」には持ち込みたい。 (静)