日高町阿尾地区避難広場整備事業は、ことし10月下旬の完成に向けて総仕上げとなる工事が発注され、着々と進められている。海抜20㍍の高台で、巨大地震に伴う津波襲来が予想される際には、地元住民ら最大1000人の一時避難が可能。県の急傾斜地崩壊対策と町の避難広場の整備を一体的に行った県内では珍しい事業手法で、工期の短縮や効率的な予算配分にもつながっている。
 同地区は海と山に挟まれる地形で、そのうえ民家が密集しており、これまで集落内の白鬚神社や光徳寺西の空き地を避難場所にしていたが、数百人が逃げ込めるほどの広さはなかった。南海トラフの巨大地震では、揺れから約20分後に平均8㍍の津波が襲来することが想定されており、新たな高台の整備が望まれていた。
 避難広場の現場は、集落北の山の斜面。平成25年度から27年度末までの3カ年の事業費は2億3000万円で、うち県が1億6000万円を投入して斜面にコンクリート枠を設置する急傾斜地崩壊対策の工事を行い、その斜面の一角に町が7000万円で避難広場となる高台を整備。広場の面積は1300平方㍍。広場への進入路は集落北の県道御坊由良線からアクセスするように整備されており、延長97㍍、幅員5㍍となっている。
 最終の工事となる本年度は町が独自で行い、818万6400円でソーラーLED照明1基、転落防止柵、ガードレール、手すり、防風柵などを設置。さらに1050万8400円で、アスファルト舗装も行う。本年度の施工は、各種整備が志賀の中野建設(中野匠代表)、アスファルト舗装が湯浅町の㈱中井組(中井賢次代表)。工期は10月28日。町担当課では「これで予定していた工事は終了。11月4日には津波避難訓練も行いたい」と話している。
 日高振興局建設部河港課は「急傾斜地崩壊対策と避難広場整備の事業を一緒にするのは県内でもあまり例がなく、日高地方では初めて。効率的に工事が進められた」と説明している。