ことし3月からナマコの種苗生産に取り組んでいる日高町阿尾、比井崎漁業協同組合(初井富男代表理事組合長)は、20日までに約800匹のナマコの育成に成功し、来週中にも地元漁港内へ初放流する。地場産業の振興につなげようと日高地方で初の試み。4、5年後には水揚げできるサイズにまで成長するという。
 比井崎漁協では、以前から地元で漁業者がナマコを水揚げしていることから、「少しでも収入の安定につながれば」と事業をスタート。町と県から本年度予算で補助金を受けて、漁協施設内に特設の水槽や空気を送る装置、海水をろ過するフィルターなどの設備を購入。その後、和歌山県水産試験場の指導の下、地元のナマコを使って、ホルモン注射で卵と精子を取り出して受精。ふ化から中間育成までを一貫して行ってきた。受精させた卵は約20万個あり、最初は「幼生(稚魚のようなもの)」と呼ばれ、顕微鏡で確認していたが、徐々に目視で確認できるようになり、現在0・5㌢から2㌢程度にまで育ち、約800匹を確認。体はまだ白っぽい色をしている。通常、卵の数に対して約100分の1が育てばいい方で、なかなか受精させた卵が全て育つというわけにはいかないという。初放流は阿尾と田杭の2漁港で行う。20日には地元漁師らの協力を得て放流場所を確認。さらに放流した時にナマコのすみかとなるよう、貝殻をつめた筒を作り、手作業で1匹ずつ数えながら筒にナマコを移していった。放流の際はこの筒ごと水深2㍍から3㍍の海底に沈める。4、5年後には、水揚げに適した体長15㌢、重さ300㌘の「成体」に育つ。来年以降も種苗生産は継続していく。
 ナマコは、ウニやヒトデと同じ棘皮(きょくひ)動物の一種。中国や国内でも乾燥ナマコは「海の黒いダイヤ」と呼ばれ高級食材として珍重されており、コラーゲンやビタミン、カルシウムなどの栄養素が豊富なことから別名「海の朝鮮人参」ともいわれている。日本ではナマコ酢にして食べることが多い。これまで和歌山県内での種苗生産は加太漁協などで行われているが、御坊・日高にはなかった。