みなべ町山内の千里の浜で、アカウミガメの産卵がピークを迎えている。ことしは5月17日夜から18日未明にかけて初めて上陸と産卵が
確認された。以後、順調に上陸と産卵が行われており、現地で研究している日本ウミガメ協議会によると、昨年の約2倍のペースで推移しているという。例年だと8月末ごろまで続き、その後は子ガメの孵化がみられる。
 千里の浜のウミガメ調査では、同町東吉田の後藤清さん(87)の功績が大きい。小学校教員在任中の昭和56年から30年以上にわたり、シーズン中に千里の浜を歩き続けた。5~8月までの産卵期間中、毎晩日没から深夜まで1・3㌔にも及ぶ浜を往復し、ウミガメの頭数や甲羅の大きさ、孵化調査などを行い、冊子にまとめて記録に残した。孵化調査も行い、10月ごろまで浜に入り浸りとなる日を過ごした。集めたデータは生態を知る上で貴重なもので、千里の浜のウミガメ第一人者として知られている。
 たまに取材で浜を歩くことがある。砂に足をとられて歩きにくい。1・3㌔もある浜を少し歩くだけでも肉体的にしんどい。それを繰り返し、続けられたことには頭が下がる。後藤さんが高齢になったこともあり、2年前からは青年団の歴代会長らに引き継がれた。
 最近は産卵シーンが注目され、県内外から大勢の観察者が訪れるようになった。それも後藤さんがウミガメを現場で調査し、保護活動を行ってきた結果だろう。今月10日からは、東京や大阪からボランティアが訪れて調査を行っている。ウミガメを通じた活動は大きく広がった。
 1つのことに打ち込み、それを継続することで大きな道が開けてくる。問題はその努力が続けられるかどうか。まさに継続は大きな力となる。(雄)