初場所千秋楽で大関琴奨菊が豪栄道を破り、日本出身力士として平成18年初場所の栃東以来、10年ぶりとなる賜杯を手にした。今場所は鋭い立ち合いから得意のがぶり寄りに本来の力が戻り、モンゴル勢の3横綱を撃破しての優勝はじつに痛快。久々の「あっぱれ」だ。
 大相撲にはかつて、「星の貸し借り」という言葉があり、ファンの間でも八百長が半ば公然、暗黙のルールのような感があった。若貴兄弟の登場と外国出身力士の台頭以降、徐々にその影は薄くなり、5年前の賭博に絡んだ八百長問題等を経て、いまでは目に余る手を抜いた相撲はみられなくなった。
 今場所の幕内力士の平均体重は163・9㌔で過去最高となった。最重量はモンゴル出身の逸ノ城で214㌔、日本出身では豊響の186㌔。日本人力士は体格でも明らかに外国勢より劣り、当然、15日間のガチンコ勝負でけがが絶えず、今場所はとくに足を引きずる姿が目立った。
 実力より人気が先行する遠藤は、ひざの大けがを隠して出場したが、先場所同様、初日からまったく相撲にならない。勢い、巨漢につぶされれば致命傷を負いかねず、師匠に説得されて7日目から途中休場したが、ファンもただ土俵に上がるだけの姿は見たくない。幕下に落ちたとしても、万全の状態で這い上がってきてもらいたい。
 けが人続出の大相撲ではあるが、八百長が一掃され、これも当然なのかもしれない。結果として、人気はじわり回復しつつある。絶対王者の白鵬は衰えを隠しきれず、焦りからか、強さを誇示しようと勝ち方にこだわり、肝心なところで墓穴を掘るようになってきた。角界が長い長いトンネルを抜け、他の日本人力士の発奮に期待。早くも春が待ち遠しい。(静)