由良町小引、小浦正義さん(73)の庭に飾っていた石灰岩が、珍しい「カニ目石(通称)」であることが分かり、20日に町へ寄贈された。貝の一種がすみかとして掘った穴が無数に開いているのが特徴で、2億5000万年前に形成された石灰岩がある由良町ならではの貴重な学術的資料。町では、この日のうちに旧白崎中学校の校舎内に運び、保管している。
 小浦さんによると、かつて祖父が地元の採石場か海岸などどこで見つけてきたのかはっきりしないが、子どものころから家の庭の石垣のところに飾っていた。その石垣をやり直すことになったため、この際処分しようかとも考えたが、「昔から残しているものだから貴重かもしれない」と考え、海南市の県立自然博物館に持ち込んで調べた。
 カニ目石は、穴に貝が入った状態だとカニの目のように見える。小浦さん宅にあったのは、長さ約60㌢、高さ約30㌢の卵型。直径は10円玉、深さは2、3㌢ほどの穴が数えきれないほどびっしり。まるで隕石のようにも見える。石灰岩が海中に沈んでいる時に、掘った穴で暮らす「穿孔(せんこう)貝」の一種が、歯舌を使って開けたとされており、いまは貝がなくなっている。比較的軟らかい性質の石灰岩は貝にとって穴が掘りやすいこともあり、由良町の海岸で穴が開いた石灰岩を見ることはできるが、これだけ1個の岩に集中的に穴があるのは珍しいという。さらに由良町は白崎や戸津井など石灰岩の採石場として知られ、現在は白崎海洋公園や戸津井鍾乳洞として観光にも活用されているが、そんな由良町の目玉でもある石灰岩の貴重な学術的資料とされる。同博物館では「由良町ならではの資料で、町内で展示してはどうか」とアドバイス。また、「仮に陸地の採石場で見つかったということなら、かつてそこが海の中だったことを示す証にもなるのではないか」と話している。
 これを受けて小浦さんが町に寄贈することにし、去る15日には職員や町の歴史に詳しい大野治さんに現物を確認してもらっていた。町では将来的にトラディショナルミュージアム(文化伝統継承博物館)の開設を目指している旧白崎中学校内で他の歴史的資料とともに保管している。