和歌山県にもゆかりのある戦国武将、真田信繁(幸村)を主人公とするNHK大河ドラマ「真田丸」がスタート。脚本もキャストも話題性満載だが、実際に見てみたところ笑いあり涙あり、期待にたがわぬ面白さであった
 第1回の舞台は滅亡寸前の甲斐・武田家。家臣が次々に抜けて不安な武田勝頼を、真田兄弟の父である重臣の真田昌幸が「浅間の山が火でも噴かぬ限り武田家は安泰でござる」と大笑して励ます。その次の場面で、「48年ぶりに浅間山が噴火した」の説明と共に火を噴く浅間山が大写しになるのだった。もう一つ笑いを誘ったのは、高嶋政伸演じる北条氏政。人物紹介の映像のみだが、汁かけ飯を掻き込むように食べる姿が描かれる。「飯に汁を二度かけて食べる氏政を見て、父の氏康が『飯にかける汁の適量も分からんとは、北条もわしの代で終わりか』と嘆いた」という逸話を知っていると面白い場面である
 平岳大演じる武田勝頼は、ここでは静かで気品ある悲劇の武将として描かれる。「上州へ移るべき」という昌幸の言を容れず甲斐に残る決意をするのだが、真田一族への細やかな配慮を信繁・信幸兄弟に告げる。思いやり深い主君の言葉をじっと聞く信繁の目がみるみる赤くなり、涙がにじみ出てくる。見る人の心を動かす演技であり、脚本だった
 歴史物は、よほど斬新な視点の創作でない限り基本的に「ネタバレ」で、勝敗の行方などの興味で見せるドラマではない。この人物はこの先こう動くが、それをどう表現して見せてくれるかという、役者と作家の「仕事ぶり」を楽しませてもらうのが醍醐味である
 第1回ではまだ少年のような信繁が如何にして「日本一の兵(ひのもといちのつわもの)」へ育ってゆくか、日曜夜が楽しみだ。  (里)