紀州日高漁業協同組合が、今冬にも完成する由良町衣奈漁港内、水産加工処理施設の改修を機に、同施設内で特産衣奈ワカメを使った「塩蔵ワカメ」の本格生産に乗り出す。いまは組合員が個々に設備を持って生産しているが、設備の維持、管理費が大きな負担。今回、漁協が同施設内に製造ラインを構築して組合員に利用してもらう形で、衣奈ワカメ養殖の保護、育成につなげたい考えだ。
 塩蔵ワカメは、水揚げされたあとゆがいて水で冷やし、ミキサーのような機械で塩をまぶして脱水。葉の部分が商品となり、茎は同じく特産の「衣奈そだち」に利用される。ワカメは海の大豆と言われ、ミネラルもたっぷり。ワカメの商品では香りが引き立つ乾燥ワカメもあるが、塩蔵の方が塩を流すだけで手軽に利用できる上に、鮮やかな緑色が美しく、みそ汁やスープ、サラダなどに最適。冷蔵庫で保存もできる。毎年3月から販売されて、5月か6月には売り切れる人気となっている。
 これまでは組合員がそれぞれ所有する専用設備で生産し、それを漁協が買い取って衣奈水産加工処理施設内で袋詰め作業を行っていた。ただ、生産者の設備が老朽化し、仮に改修するとなれば数百万円の負担を強いられることになるため、塩蔵ワカメの生産だけでなく、高齢化や後継者不足、水揚げ時の重労働もあって養殖業自体から撤退を考える人もいる。かつて数十軒あった養殖業者は現在9軒にまで激減しており、うち塩蔵ワカメの生産は4、5軒になっている。そこで漁協側が加工処理施設内にもともとあった設備を改修して利用できるようにし、生産者のコスト面での負担を軽減して生産量アップも図る。将来的には、漁協自体が生産を肩代わりすることも視野に入れている。
 加工処理施設は、鉄骨造り一部2階建てで面積318平方㍍。町が昭和61年に建設。耐用年数が経過して老朽化し、改修の必要が出てきた。総事業費は1600万円で、うち町が1100万円を補助。これを機会に町から漁協に施設が無償譲渡された。現在、生産しているのは塩蔵ワカメ(年間500㌔)、衣奈そだち(真空パックと瓶詰めで各600㌔)のほか、イワシを使った生アンチョビなどもある。今後、由良町のアジ、サバ、イサキを使った新商品の開発も進めていく。平成30年度までに全体で生産量2割増しを目標に設定している。