文化庁の文化審議会は19日、名勝の新指定と史跡の追加指定等に関し、博物学者南方熊楠ゆかりの紀南地方の神社や景勝地など13カ所を「南方曼荼羅の風景地」として新たな名勝に指定するよう文部科学大臣に答申した。
 南方熊楠は近代日本の環境保護運動に先駆的役割を果たした博物・民俗学者。明治末期から大正にかけて、国策として進められた神社合祀に反対し、のちに高野山真言宗管長などを務めた仏教学者土宜法龍に送った書簡の中で、仏教の曼荼羅にたとえ、自然界の複雑な現象を科学的方法論として描いた複雑な図が「南方曼荼羅」と伝えられている。
 「南方曼荼羅の風景地」には、田辺市の神島(かしま)、闘鶏神社、天神崎、上富田町の八上(やがみ)神社、串本町の九龍(くろ)島などが含まれ、これらが指定されれば県内の名勝は12件(日高地方はなし)となる。
 史跡は、現在、中辺路や伊勢路など7カ所の「熊野参詣道」に紀伊路を加え、海南市の藤白王子跡や広川町の鹿ケ瀬(ししがせ)峠、那智勝浦町の小狗子(こぐじ)峠など24カ所を追加指定。現在の「高野山町石(こうやさんちょういし)」は名称を「高野参詣道(こうやさんけいみち)」と改め、三谷坂(みたにざか)や女人道(にょにんみち)など4カ所を加えるよう答申した。