集団的自衛権の限定行使を可能にすることなどを柱とする、安全保障関連法案が閣議決定された。日本の安保政策の歴史的転換に向け、安倍首相は「日米同盟による抑止力向上のためには法制化が不可欠」とし、あらためて現状の安保法制は不十分との認識を示した。
 同盟国が武力攻撃を受け、そのために国民の生命が危険にさらされた場合や、漁民を偽装した武装集団が日本の離島に上陸、占拠するなどのグレーゾーンにも対応できるのは自衛隊をおいてほかにない。その自衛隊がいざというとき、速やかに行動できるようにするための恒久法。それは決して、日本が戦争を仕掛けるためのものではない。
 他方、大阪都構想の実現を目指した橋下大阪市長の戦いが終わった。結果は「NO」。現在の任期が満了すれば、政界から完全に身を引くことになったが、動かぬ政治を動かし、歴代市長が手もつけなかった改革を次々断行した実行力は高く評価されるべき。一時、国政への勢力拡大で迷走し、府市民の関心が薄れ、都構想がぼやけてしまったのが悔やまれる。
 政治家はまちづくり、国づくりのビジョンを示し、自身の考えや主張をわかりやすく有権者に伝えなければならない。目の前の巨大な壁を打ち破るには、橋下市長のように「戦(いくさ)」と称して選挙を挑む覚悟も必要。しかし、急いて事を仕損じたか。敵に容赦なく牙をむく姿も、市民の目には余裕がないように映ったのかもしれない。
 大阪と日本のリーダーでは肩の荷の重さは違えど、国を憂う熱いスピリッツは同じ。橋下市長は引退するが、安倍首相はいよいよこれから厳しい山越えが続く。まずは安保法制。慎重にも力強く、国民のために歩を進めてもらいたい。  (静)