筆者は由良町在住で、小さいころから由良湾を見て育ってきた。学生時代、大阪の知人に出身を聞かれて「由良町」の名を出せば、行ったことがあるとのこと。和歌山県内でもメジャーな町ではないと思うが、なぜだろうと尋ねれば、潜水艦を見にいったという。確かに由良湾には海上自衛隊の基地があり、いまでも時折潜水艦が来ている様子を見かける。また社会人になってからは町に講演のために来た講師が、町内の造船会社で修理に来ている全長数百㍍ある巨大なタンカーに驚いたことを話していた。潜水艦にしてもタンカーにしても、昔から住んでいる筆者にとっては当たり前の光景。特に思うこともなければ、誇らしく人に話そうとしたこともなかった。
 地域再生を目指す市町村に提言する地域総合整備財団「ふるさと財団」が14日から3日間、印南町に滞在。町を見回ったり各種団体からの意見をまとめ、今後の活性化へ向けたアドバイスを行った。それによると印南町には民泊や高速SAなどの素材があることを紹介していたが、中でも印象的だったのは素材の中に「石垣風景」や「街路地」「漁師の動き」「花きの生産場面」など、普段の何気ない風景が含まれていたことだ。
 外から輝いて見える地域の魅力というのは、地元が力を入れている分野だけでなく、普段生活している地元民では気付かないような、ささいなことにあるのかもしれない。しかし「灯台下暗し」というように、身近過ぎる存在には魅力を発見することが難しい。今回のアドバイザーや観光、民泊などで訪れる外部の人が発見する一見何気ないような魅力に着目することで、地域再生の鍵が見つかるのかもしれない。     (城)