「知ってる? 水商売の女の子は、暮れから正月にかけて自殺する子が多いって。どんな遊び人も、年の瀬ぐらいは家に帰っちゃうから。さみしいのよ...」。高倉健主演の映画『駅 STATION』という映画で、小料理屋の女将が健さん演じる客と紅白歌合戦を見ながら問わず語りにいう。
 年末年始の休み、1人暮らしの人は一日中誰とも会わない日もある。こたつに入って冷たいコンビニ弁当を食べていると、水商売の女性に限らず、誰でも孤独が身にしみる。寒い冬に自殺者が増えるという話はなんとなくそうかなと思う。
 しかし、内閣府の統計によると、12月は年間で自殺者が最も少なく、例年、3~5月が多くなっている。理由は生活環境の変化などさまざま指摘され、日照時間の変化に伴う神経の不調という見方もある。
 昨年の日高地方地域医療対策協議会など主催の自殺対策研修会で、講師の筑波大学の高橋祥友教授が自殺対策の要点として、「屋上から飛び降りた、手首を切ったなどの手段や、未遂直後の表情、感情だけで危険性を判断するな」と話していた。未遂直後は一見、すっきりした様子の人もおり、リストカットも「前にもあったから...」と軽くみてはいけない。死にたいという意思を持った行動はどんなケースも、死へ大きく踏み出しているのだという。
 しかし、周囲の人はその人の笑顔をみれば、「あ、少しよくなったかな」と安心してしまうのが当然。そのために、救えなかったときのショック、後悔も大きい。
 笑顔の裏のさみしさは家族でさえ見抜くのは難しい。危険な兆候に気づいたときは声をかけ、絶対につながりを切らさず、医師や専門家につなごう。多少大げさなぐらいでもなんらかまわない。   (静)