幻の焼き物、「善妙寺焼」が見つかった?―― 美浜町和田、佐々木正至さん(82)の自宅に、江戸時代中期に御坊市島の善妙寺で焼かれていた「善妙寺焼」とみられる古い花生けがあることが分かった。小ぶりな壷で、高さ19㌢、直径10~13㌢。善妙寺焼の特徴の一つ「籠目」という編み目模様が全体に施され、底には「善」の一字が刻まれている。
 善妙寺焼は、御坊市島の善妙寺で六代目住職の玄了が宝暦年間(1751~62年)に手がけた焼き物。県内では和歌山市の甚兵衛焼(17世紀初頭)に継いで2番目に古い歴史を持つ。作られていたのはわずか10年ほどで現存する品は少なく、「幻の窯」と呼ばれるほど。寺院や旧家などに幾つか伝わっているとみられ、美浜町田井の常福寺に伝わる品は町指定文化財となっている。
 しかし、善妙寺焼に詳しい人に写真を見てもらったところ、「当時の品にしては籠目模様が均一にそろい過ぎているし、銘の入り方もこれまで知られているものとは違う。確かなことは言えないが、もっと後の時代に善妙寺焼を模して作った品ではないか」との感想。佐々木さんは「もしかしたらという可能性もゼロではないので、これ以上詳しく調べるのはやめておきます」と苦笑い。善妙寺近くの春日窯を主宰し、善妙寺焼の復活を目指して研究を続けている陶芸家の中野孝次さんは、「御坊にこんな歴史的な焼き物があったことを知らない人も多いと思う。たとえ模作品でも、これで善妙寺焼の価値が広く知られるきっかけになれば、まちおこしにつなげることも可能なのでは」と話している。