御坊市制60周年事業、平成26年度第5回市民教養講座は25日に御坊市民文化会館で開かれ、㈱独立総合研究所代表の青山繁晴さんが「日本の出番、祖国は甦る」をテーマに講演。和歌山県沖など日本近海の海底に大量にあるとみられるメタンハイドレートについて説明し、「実用化を進めれば日本は資源大国になれる」と力を込めて語った。日本を巡る諸問題でも熱弁。「いざという時、自分より人のために行動できるのが日本人の心」などの言葉に拍手が送られた。
 青山さんはまず、講演に先立って妻で水産学博士の青山千春さんと共に日高港の新エネルギーパーク「EEパーク」を訪ねたことを話し、同パークで数年前までメタンハイドレートの燃焼実験を公開していたことを紹介。施設内には現物が今も特殊な保存技術で保たれていることを話し、千春さんが和歌山県沖で調査した経過なども含めてメタンハイドレートについて分かりやすく説明した。
 「燃える氷」と呼ばれ、石炭・石油・天然ガスに続く「第4の埋蔵資源」とされる。発見されたのは20年以上も前だが、いまだに実用化できていない。太平洋で海面から5000㍍の海底に発見されたが、分子レベルで砂と交じり合っているため実用化は無理とみなされていた。そんな中、1997年に千春さんが日本海のナホトカ号沈没で政府の依頼を受けて対処に当たり、重油をすべて回収しただけでなく純度100%のメタンハイドレートが海底から柱状に立っていることを発見。そして昨年からことしにかけての調査で、和歌山県沖の海底でも柱状のメタンハイドレートが確認された。
 青山さんは「日本近海はメタンハイドレートの宝庫。実用化できれば、日本は高い石油を買わなくても自前の資源を使える。これは第2次大戦後のエネルギーを巡る世界秩序がひっくり返るほどすごいこと。政府は調査に年間50億円の予算をつけているが、船を一日借りるだけで1000万円かかるのにそんな額で足りるわけがない。国家の年間予算は100兆円。日本を資源大国にするための調査には5000億円、5兆円出してもおかしくない」と力説。「和歌山は日本の未来を切り開く突破口になり得る。『ぼくらが主人公となって日本を建て直す』つもりで、皆さんが政治家の尻をたたいて状況を変えてほしい」と強く訴えた。
 時には客席に降りて観客の声を聞きながら、北朝鮮拉致問題や福島原発災害などについても自論を展開し、東日本大震災で最後まで放送で避難を呼びかけて亡くなった役場職員の女性、天皇皇后両陛下が膝や首に痛みがあるにもかかわらずかがんで被災者と話されたこと、「少しでもきれいな状態で家族のもとへ」と手袋や道具を使わず素手で遺体や遺品の回収作業をしていた自衛官を紹介。「日本人の胸の中には『人のために生きる』という心がずっと受け継がれている」と熱を込めて話した。予定より30分近くオーバーしたが、観客は最後まで耳を傾け大きな拍手を送っていた。