広島市北部を襲った土砂災害の惨状には言葉を失ってしまう。家族を失った人の悲しみや、生存を信じて名前を叫ぶ映像をテレビで見ていると胸が痛い。専門家は当初、地質的に危険性が高い場所だったと分析していたが、その後の調査では比較的固い地盤だったという報道もあった。3時間で200㍉を超えるというすさまじい豪雨がもたらした災害だ。住民の方々もまさかこれほどの土砂災害が起こると思っていなかったろう。家にいる方が安全だと思うのが自然。予期せぬ災害からどうすれば身を守れるのだろうか。
 天気のプロである気象庁ですら、集中豪雨の地域や雨量を予測するのは難しい。そんな中で今回の報道でも避難勧告を出すのが遅かったなどと指摘されていた。見直しは当然必要だが、避難するかしないかを、行政などからの勧告が出るか出ないかで判断するという仕組み自体に限界があるように思えてならない。今回の災害をみていると、行政は雨量を予想したり雨が強くなってから勧告を出すことにこだわるのではなく、普段から住民の住む場所にどんな危険があるかを調査し、伝えておくことが求められるように感じる。
 京都府福知山市の水害では、住民が避難所に行く「水平避難」ではなく自宅の2階などで安全を確保する「垂直避難」が実践された。避難中に被災した過去の教訓が生かされたのだ。もちろん広島市の災害に当てはまる訳ではない。災害にセオリーはないのだ。いま自分にできることは、住んでいる周りにどのような危険があり、いつ、どのタイミングでどこに避難すると判断するか再考すること。教訓は必ず生かさなければならない。  (片)