御坊市寺内町のシンボルといえる横町の「中川家の邸宅」を活用した県福祉事業団の食事処がほぼ完成し、今月31日にオープンすることが決まった。一般客にそばや軽食を提供する場で、障害者の就労訓練の受け皿になるとともに、休憩所や食事処が少ない周辺の寺内町観光推進の拠点として関係者の期待が高まっている。
 食事処となるのは、邸宅の敷地内にある木造の倉庫(元は農機具等収納)で、すでにリフォームや増築工事が終了。倉庫部分にテーブルやいすで18席分を用意し、増築部分を調理場にする。そばの調理には、経験を積んだ料理人を雇う予定で、本格的なそばが楽しめそう。就労訓練をする障害者は8人がすでに決まっており、運営を手伝う。うち1人はことし3月で閉鎖された本町シャベローゼからの受け入れとなる。現在、敷地内では中庭に石畳を敷く工事なども急ピッチで進められている。
 中川家の住居部分については、建物の外観をそのまま復元して、障害者の芸術作品などの展示場にするよう計画しており、食事処のオープン後に改修工事を行い、今秋の完成を目指す。
 中川家の邸宅は、昭和10年、当時1000円で一般住宅が建てられた時代に10万円の巨費と5年もの工期をかけて建築され、「日高御殿」と称されたほど。大阪在住の所有者の意向で取り壊しの可能性があったが、市内有志の御坊まちづくり委員会(野村義夫会長)が古い町並みを保存させようと購入希望者を募り、同事業団が趣旨に賛同して購入した経緯がある。