御坊市名屋地区の防災女性の会や御坊第4地区至誠会を取材する機会があった。いずれも巨大地震に伴う大きな津波被害が心配される地域だが、メンバーの悲痛な声を聞いていると、やはり避難タワーやビルが必要という気がしてくる。
 両会ではこれまでに避難訓練を重ね、最寄りの避難ビルや高台へ到着するまでの時間を確認。高齢者や足の不自由な人が歩いて逃げ切るのは難しいと実感している。薗地内に建設する避難タワーも距離的に遠いため期待は薄く、「家でお経をあげているしかない」とあきらめの声さえある。
 確かにタワーやビルなど人工的な構造物は万全ではない。できれば津波が来ない高い土地に逃げるのが一番安心。しかし、現状で逃げるのが困難な人がいるのなら、どうすべきか別の対策を考えなければならない。市では現在、原則車の利用を禁止して緊急指定車で避難弱者を乗せて逃げる方法を考えている。1人が助けにいけない時は別の人というように「二重、三重」で駆けつける工夫もする。さらに車でいくなら道路に渋滞や家屋倒壊などがあってはならず、避難路の十分な検討も進めている。
 ただ、原則車の利用禁止を市民が守っても、市内を車で走っているのは市民だけではないし、二重、三重で避難弱者救出に駆けつけるといっても、助ける側がまず自身の安全を確保しなければならない中でどこまで機能するのか未知数。車での避難計画も万全ではない。
 もちろん市の対策はそれだけではないが、はっきり言ってどの対策も万全ではない。ならばできる限りの対策をそれこそ二重、三重にしておくことが大切で、タワーやビルの建設も視野に入れるべきだろう。     (吉)