御坊市寺内町のシンボルといえる横町の「中川家の邸宅」を食事処や展示場などにして活用しようと、県福祉事業団は、建物の改修工事を進めている。食事処は一般客にそばや軽食を提供する場として、早ければ6月末に完成し、7月上旬にオープン。障害者の就労訓練施設にするのが目的だが、寺内町観光の推進にも一役買ってくれそうだ。
 食事処となるのは、邸宅の敷地内にある木造の倉庫(元は農機具等収納)で、現在、老朽化に伴う改修やリフォームとともに、増築も進めている。完成すれば、倉庫部分にテーブルやいすで18席分を用意し、増築部分を調理場にする。そばの調理には、経験を積んだ料理人を雇う予定。就労訓練をする障害者は8人がすでに決まっており、運営を手伝う。
 当初、中川家の住居部分を改修して食事処にする計画だったが、建物が古いため難しく、住居部分は建物の外観をそのまま復元して、障害者の芸術作品などの展示場にするよう計画を変更。こちらの改修工事は7月中に着工して、完成は今秋。食事処が先行してオープンする格好となる。同事業団は「地元商店街などとも連携して、寺内町観光推進の取り組みにも協力したい」と話しており、寺内町への集客アップにつながると期待される。
 中川家の邸宅は、昭和10年、当時1000円で一般住宅が建てられた時代に10万円の巨費と5年もの工期をかけて建築され、「日高御殿」と称されたほど。大阪在住の所有者の意向で取り壊しの可能性があったが、市内有志の御坊まちづくり委員会(野村義夫会長)が古い町並みを保存させようと購入希望者を募り、同事業団が趣旨に賛同して購入した経緯がある。