あす11日は母の日だ。日ごろいえない感謝の気持ちを表そうと考えている人も多いだろう。筆者は最近、母の日と聞くと「母の日参り」をイメージするようになった。日高地方の方ならご存知の人も多いと思う。母の日に線香と花を持ってお墓参りにいって、家族愛や絆を再認識してもらおうとの取り組みだ。2年ほど前から御坊市名田地区のJA青年部の若者たちが提唱し始めた。きっかけは、親が子を、子が親を手にかける凄惨な事件が連日報道されたのを見て、家族愛をあらためて感じてもらうために、花農家として出来ることはないだろうかとの熱い思いだ。情熱にあふれる人々の思いは必ず他人にも伝わる。
 地道な活動を行っている若手生産者に取材させてもらう機会も増え、いろんな話を聞かせてもらうと、母の日参りという言葉が少しずつだが着実に浸透してきていることを実感できるようになったという。彼らが目指す到達点はバレンタインように、いつかは母の日といえば母の日参りと全国に定着することだ。その思いを持ち続ければ、将来、必ず実現できるだろう。
 彼らの活動は県内にとどまらず、大阪や東京など都市圏でも活発に行われている。積極的な活動があるからこそ新たな出会いがあり、輪が広がっていく。実際、沖縄の花生産者との交流も始まろうとしている。実はこれこそが人との絆の本質なのではないだろうか。顔の見えないネットを介した理解不能な事件が増えている昨今、人はやはり人と交流してこそ絆や愛が生まれる。母の日を一つのキーワードに、それぞれの家族の在り方について考え、また家族がいるありがたさ、いまを生きている幸せを感じてみよう。  (片)