12月も中旬に入り、寒気が一層厳しさを増している。夜など、車を降りた瞬間に突風に吹きつけられて立ちすくむ。だが家に駆け込む前にふと顔を上げると、晴れ渡る夜空の美しさに立ち尽くす。この季節ならではの自然の贈り物だ。
 晩秋から冬にかけての夕暮れ時には、西の空に浮かぶ雲は春や夏とは違って陰影がくっきりと、不思議に立体的に見える。壮大な構築物のようにも見え、日常的なのにドラマチックな空の風景に見とれる。そして宵闇が迫ると、一際明るく輝く金星が登場。明けの明星、宵の明星として親しまれ、平安時代には「夕星(ゆうづつ)」という美しい名で呼ばれたこの星は、実は今が「見頃」だという。
 先日から金星の明るさがただ事ではないような気がしてネットで調べてみたところ、今は特に光度が増しているということで、先週の土曜日には最大光度だったそうだ。マイナス4・7等星となり、1等星の160倍の明るさ。ちょうど三日月と並ぶ位置にあるところも見ることができた。絵画のような美しさだった。
 「木枯らし途絶えて冴ゆる空より/地上に降りしく奇(くす)しき光よ/ものみな憩えるしじまの中に/きらめき揺れつつ星座はめぐる」...文部省唱歌の「冬の星座」にあるように、りんと澄みわたる大気は星々の光を真っすぐに地上に届けてくれる。寒ければ寒いほど、夜空は一層美しく見えるような気がする。悪いことと良いことが背中合わせにあることの象徴のようにも思える。
 ことしの冬は、昨年に続き厳冬だという。美しい夜空、おいしい鍋物など冬ならではの楽しみもあるが、とりあえずは万全の体調管理を心がけながら、寒さと多忙に負けず年末を乗り切りたい。     (里)